秋は大忙し
         〜789女子高生シリーズ

         *YUN様砂幻様のところで連載されておいでの
          789女子高生設定をお借りしました。
 


いつまでも残暑を引きずりつつあった妙な秋も、
さすがに10月へと突入すると観念するものか。
朝晩の涼しい大気がぐんと冴えて来た中で、
相変わらずに誰かさんが短距離走をとことん嫌がっていた、
ある意味 因縁の体育祭も無事に開催され。
今は次のイベントへ向けて、
名家のご令嬢らが、
それなりの淑やかさを保ちつつも
きゃぴきゃぴ・ワクワクと沸いている某女学園であり。

 「ああでも、あのチア・フラッグの壮麗だったことvv」
 「ええ、ええvv」
 「ひなげしさんの旗さばきは、
  切れがあってそりゃあ見事でしたものねぇvv」

ご近所のみならず、グルメ雑誌でも評判の、
甘味処“八百萬屋”の看板娘さんが、
小柄なベビーフェイスの醸す
朗らかな愛らしさからは少々想像し難い凛々しさで。
帆船の帆が海風にはためく様さえ思わせる軽快さ、
動かすことを思えば腕へかかる荷重は何十キロにもなるだろう、
身の丈以上という大型フラッグを、
ばっさばっさと切れよくさばいて見せた応援演技は、
今年もまた、来賓の皆様のみならず、
在校生のお嬢様がたにも鮮烈に印象づけられており。
はたまた、

 「白百合様の韋駄天ぶりも颯爽としてらしてvv」
 「それだけじゃありませんことよ?
  式次第のアナウンスの、
  それは品があっての なめらかだったことといえばvv」

本来ならば放送部員が担当すべきところだが、
剣道で鍛えられたそれだろう、凛として張りのあるお声は、
話すときの抑揚の麗しさも相まって、
お嬢様たちには常から評判の、草野さんチのお嬢様だったので。
こういった公式式典のアナウンスにも、
手隙ならという条件付きながら、
客員として参加なさるのが、もはや当たり前の流れとなっており。
今年もまた、姿を知らぬ人々の間では
“謎めきのナイチンゲール”との噂を振り撒いていらっさるとか。
してまた、

 「活躍と言えば、何と言っても紅バラ様だわvv」
 「そうそうvv」
 「出られた種目全てで優勝の栄誉を、今年も難無く果たされたし。」
 「しかも今年は……。」

どこからか紛れ込んだ、ご近所でお飼いの大型ハスキー犬が、
フィールド内への堂々の乱入、という、
結構 前代未聞な大事件があったのだが。
大型犬には慣れておらずなお嬢様がたが、
きゃあきゃあと、半分以上 本気で悲鳴を上げての、
右往左往して逃げ惑っていた只中から。
愛らしいデコのなされたマイマグや籐のバスケット、
タータンチェックや ○マンサタバサの花柄ブランケットなどなどが、
角番横綱、千秋楽の取り組みの後の、
客席からの座布団のように飛び交うのを踏み分けて。
彼女もまたチア・フラッグに参加していての、
ミニスカートの鼓笛隊スタイルだった三木さんチの久蔵お嬢様。
どこからか転がって来た、
トラックライン用の三角コーンを、
片方の爪先でがっしと受け止めると。
そのままの姿勢でギンと目許を鋭く眇め、
はしゃぎまくりの大型犬(狼に酷似)を見やったその途端。
大人でもなかなか手綱を引き留められない馬力持つ、
南極ではソリ引くぞという、太っとい手足した大きなわんこだったハズが。
見るからに はっと我に返って あっと言う間にしおしおとしおれ、
その場でお腹を見せて“降参”のポーズを取ったというから、

 「……久蔵殿、女王様伝説が学校にまで広まっちゃいましたね。」
 「〜〜〜〜〜。」
 「こらこら、そんなお顔するんじゃありません。」

肉薄な口許をアヒル口ならぬ への字にひん曲げた久蔵だったのへ、
濃色のセーラー服に包まれた細い肩、
よしよしと抱き寄せ撫でてやったのが七郎次なら。

 「ハンドラーの体育大生が、
  俺でも振り切られたのにって眸を丸くしてましたよね。」
 「……ヘイさん。」

その日も振り切られたらしいごっついお兄さんが、
可憐で細っこい女の子を前に、やたら尊敬してらしたのが可笑しくてと。
とどめの一言付け足していた平八だったりして。
(おいおい)
そうまでの活躍をしたせいでかどうか、
学園祭でも何かしでかしてくれないかとの期待は大きく、
殊に、最終日の野外ライブでは、
今年もあの4人組とのセッションを予定…しちゃあいなかったハズが、
皆様から異様に期待されてしまい、

 『どうしましょう、草野先輩。』
 『あのあの、私たちにも
  “ご一緒なさるのよね”ってお声が掛かるんですよぉ。』
 『商店街のおじさんたちも、どこでそう聞いたのか、
  “あのキンキラキンのお姉さんたちも一緒なのかい?”って。』
 『今回は、わたし頑張ってギター弾けますから、
  皆さんはお歌での参加ということも…。』

当事者で、しかも下級生の彼女らからまで
気遣われての こうと言われては、
無下にも知らん顔で済ます訳にもいかず。

 「…まあ、そちらへの参加は、ねぇ?」
 「…………。//////」

日頃からも注目されておいでの彼女らだが、
ここ数日ほどは特に、終日というノリで注目度が上がっているため。
人目なんて意識したことなんてなかった筈な、
天真爛漫、史上最強のマイペースな彼女らでさえ、
微妙に肩が張ってたようで。
お昼休みのいつもの指定席、
秋晴れの空が梢の隙間からようよう透かし見えるよになった、
スズカケの木立の根方の陽だまりに座し。
濃色のひだスカートのお膝の上へ、
ランチョンマット代わりのスカーフを敷き、
それぞれのお弁当を広げての、
楽しいランチタイムの真っ最中…という、
お互いのお顔だけ見ていればいい、
こういう空間となって初めて、
ほうと息をついている始末だったのだけれども。
特に示し合わせずとも、その胸中はとうに固まっていたようで。

 「勿論、参加させていただきましょうよvv」

聖女
(マドンナ)様との呼び声も高い、白百合のお姉様が。
青玻璃の双眸たわめ、それは高貴ににっこり笑って、
しかもその手へ握ってた輪島塗りのお箸を、
三味線のバチ握りにし、
お腹辺りで弦をつま弾く振りまでして見せたりした日にゃあ。

  シチさん、演奏までやる気満々ですね。
  ………。///////(シチ、可愛いvvvv)

魅惑の微笑みにまんまとハートを射貫かれている、
紅ばらさんだったのは まま今更だとして。
(苦笑)
五郎兵衛さん特製、
中のお宝なんだろな5色おむすびを、クマさんフォークで食しつつ、

 「じゃあ、コスチュームの検討をしなくては。」

昨年とは配色も変えて…と平八が言い出し、

 「演奏曲も。」

七郎次に冷ましてもらった煎茶で口許を湿しつつ、
久蔵が言い足し、

 「そうですよね、新曲も1曲くらいはこなさねば。」

コツコツと地道な練習に努めていたバンドガールの皆様に、
大きく水を空けられているのは必至なのでと、
七郎次がくっきりした頷きを見せる。

 「じゃあ、帰りに“八百萬屋”で打ち合わせでも?」
 「……vv(頷、頷)」
 「ヘイさん、コスプレのカタログの方よろしくですvv」

せめて目新しいものを加えたいとの意欲も満々、
それぞれにきれいなお手々を握りしめ、
えいえいおーと突き上げた様子へと。
これは自然な反応として、周辺からの視線も集まっており。

 「…あれって。」

秋色錦に染められかかっている校庭の中、
似たような明るい髪色をなさっているのに、
不思議と どんな木々の紅葉にも紛れない、
溌剌オーラをお持ちの彼女らだから。

 「きっと闘志を高めておいでなのだわvv」
 「さあさ、私たちも負けないように頑張らねば。」

特に鼓舞する言動を取らずとも、
こんな風に周囲へ影響を及ぼすのは容易いようで。
さあ、今年の学園祭は、どんな仕上がりとなることなやら♪

 「あ、そうそう。ついでにゴロさんにレシピ頼めないかな。」
 「新作ケーキのですか? カボチャのムースの。」
 「 …っ。//////」
 「判りました、久蔵殿もですね。」

…って、早々に思い切り寄り道に逸れててどうしますか。
(笑)
相変わらずと言うか、マイペースなのもまた、
彼女らの持ち味じゃああるのだけれど。
ああまで盛り上がった割に、
あっさりと平生のモードへ戻ったようで、
引き続き残りのお弁当をやっつけに掛かった 屈託の無さよ。


  そういや、あの不審な偽警官は捕まったのだろか?
  あ…………。
  そうだ、そんなこともあったよねぇ。



    お後がよろしいようで…………。(汗)




  〜Fine〜 11.10.23.


  *昨年のあれこれを振り返ると、
   1年なんてあっと言う間だなぁという想いと、
   どんだけあれこれ降りかかって来たお嬢さんたちなのやら
   という呆れとが……いやその、げほんごほん。

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